いや、もっと沢山の「世界の名作と称される椅子」。デザイン専門学校の授業でここ数年続けている1回目の課題では、椅子の写真をトレース(薄い紙に写す)してもらっています。デザイナーや建築家の作家を知ること。フリーハンドできれいな線をひけること。そして何より椅子のデザインを知ること。などなど一石三鳥、4鳥を目的にしています。ただ、1000を超えるトレースはさすがにかわいそう。現在、私の厳選した120脚を挑戦しています。
普段なにげなく眺めている雑誌、CM、インターネットでもよく見かけるデザインの椅子から女優の唇のかたちのソファー、メジャーリーガーのグローブをデファオルメ(誇張)したソファ、女性のマネキンにクッションを乗せた椅子などきわもの?や木・鋼・鉄パイプ・樹脂・皮・布などの素材でどれも見た目に存在感のある椅子ばかりです。
今はお持ち帰りの課題で夢中で手を動かしている学生達ですが、授業では必ずデザインの感想を質問したりデザインされた時代背景など解説をします。見た目のかたちばかりにとらわれていてはモノの本質が見えなくなってしまうからです。ただ座る機能としての道具ではなく、座ることで人にどの様な体位をさせるのか?どのような体感や印象をさせるのか?何故、女優の唇のデザインなのか?人、時代、地域、社会など沢山の関係の中で生み出されたモノを「知る」だけではなく「考える」ことがデザインなのです。